廊下には暴れて遊んでいる人いれば、話している人もいてうるさかった。
なのに、俺らは無言でノートを運んでいた。
何も話すことがないのだ…まぁ、俺は彼女を知らないしな。


「ぁの…」


急に、か細い声が聞こえ俺は声がした方を見るために下を向く。
しかし、彼女の顔は見えなかった。


「…ぁりがとう」


俺には何のお礼かが分からなかった。
本を持つことか??それなら最初に言われたはずだ。


「何が??」


「…手伝ってくれて」


本当はこの女の子を俺は知っている。
確か一週間ぐらい前に俺らの教室に来て一輝に告った子だ。
彼女は下を向いていて顔は見えないが…泣きそうな顔をしているのであろう。
俺はようやく彼女のお礼の意味が納得できた。
そりゃ、好きな人が他の女と仲良くしているのは見たくない。
ましてはこの子は振られているしな。

俺はかける言葉が見つからず…ただ…


「ぁあ」だけ言った。

彼女は何かを言いかけたが、その言いかけた言葉を口にはしなかった。
気にはなったが、推測はしないことにした俺はノートを職員室まで届けた。


女の子はお礼を言って部活まで走って帰った。

俺はさっき別れた一輝を探そうと思ったが、歌凛といたことを思い出し足を止めた。
じゃぁ…部活に行くか??
でも、勝手に行くと一輝怒るかな??
「戻る」って言ったしな。。。
しょうがないから…5分ぐらい準備室で休むか。

そう決めた俺は準備室の方に歩き出した。