「ん、ありがとう」

淳平は笑って書類を受け取った。

やっぱり、目は笑っていない…。

「あ、じゃあこれでお邪魔しました!」

岡本くんは頭を下げると、あたしたちの前を逃げるように去った。

正確に言うなら、ピューと音が出るくらいのスピードで逃げた。

って、ずるいー!

あたしだって早く逃げたいのにー!

「堺」

淳平が名前を呼んだ。

「は…はい、何でしょう?

と言うか…プレゼンの方は?」

「15分遅れるって」

そうですか…。

「書類を忘れてたから取りに行ったのだが…」

あの場面に出くわしちゃった訳ね、はい。

「本当に、何もないよ?」

あたしは言った。