「とにかくバカ姉貴をよろしくお願いしますよ、兄貴」

智恭がニッと白い歯を見せると言った。

「バカ…!?」

「兄貴…!?」

あたしと淳平の声がそろった。

「ちょっと、姉に向かってバカはないでしょ!」

「いや、事実を言ったまでだから」

「事実もクソもあるか!」

あたしたち姉弟はギャイギャイとどつき漫才――正確に言うなら、ケンカを始めた。

「ちょっと止めて」

あたしたちを止めたのは淳平だ。

「君は、何の用できたの?」
と、智恭に聞いた。

あ、忘れてた。

「あー、すっかり忘れてた」

お前もか!

こう言うところがあたしたちは似ている。

「けど、この様子を親父が見たらぶっ倒れるな」

後頭部をわしゃわしゃとかきながら、智恭が言った。