「えっ?」


隣にいる彼に視線を移すと、久木さんは前を見つめたまま「今回の件では面倒をかけた…」と言葉を続けた。


「面倒?」


「…俺は今まで誰かから何かを与えられたこともないし、他の人間になにも求めないようにしてきた…。

だから、こういった時、どういう風に言っていいかもよく分からないが…」


久木さんに珍しく、しどろもどろに、たどたどしく繋ぎ合わせた言葉が彼の口から零れ落ちていく様子を、私はただ何も言わずその続きを待った。








「…ありがとう…」