「…疲れた…。
買い物というのはこんなに体力を使うものだったのか…」


肩にお米を担ぎ、もう片方の手にパンパンに詰められたスーパーの袋をぶら下げた久木さんが言った。


あれからタイムセールのオンパレードで、スーパーの中を走り回って、激安のセール品をGet出来た私は大満足だけど、それに付き合わされた久木さんはグッタリと疲れ切っているようだ。


「お疲れ様でした。
久木さんのお陰で、今日はいい買い物ができました」


背の高い久木さんに、タイムセールの品を全部取ってもらった。

主婦のおばちゃん達に混じって、人だかりに紛れる久木さんの姿はこれまた新鮮で、少し可笑しかったけど…。

フフフ。


「それにしても買いすぎじゃないのか?
こんなに食べきれるのか?」


手に持ったスーパーの袋を覗きこむようにして久木さんは言った。


「冷凍できるものは保存しておくんです。
安いときに買いだめしておくと経済的でしょ」


「…そういうものなのか…?
俺にはよく分からないが…」


ポツリと呟く久木さんの横顔は、どこか儚げで、とても綺麗だった。


夕焼けの色に染まった頬

秋風に吹かれてサラサラと揺れる黒髪。


顔のどのパーツも綺麗に揃っていて、まるで神様が作り出した作り物みたい…。



「ひ、久木さん、今日はシチューを作りますね!」


久木さんの顔を見つめていた自分に気付き、慌てて視線をそらして取り繕うように言った。