その時。

――ピキッ。

何かが割れるような音がしました。

「あっ、石コロさん!」
こぎつねが、ビー玉のような目を大きくして言います。

「お顔にヒビが入ってるよ! 大丈夫なの……?」

こぎつねの言うとおり、石の両目の間から口にかけて、大きな亀裂が走っていました。

「ああ……そろそろか」

「そろそろ?」

「そうさ」
石が穏やかな表情で言います。

「この何十年の間に、たくさんの動物がオイラの上に腰掛けて、空を眺めてきたんだ。オイラにも『寿命』ってのがあって、そろそろ崩れる頃だなって思ってたんだ」