窓硝子が曇って

なにも見えない

「拭きなさい」

「はい、御嬢様」

露になった世界

そうね

期待しちゃいけないわ

何もないもの

何も

「御嬢様、薬を」

「いらないわ」

「御嬢様」

「いらないわ」

楽になればいいのに

そしたらきっと

私の想像するような

「飲みなさい」

「…御父様」

水を少しずつ流し込む

ああ、苦しい

「お前のためだ」

そうね御父様

私、私

自分がわからないわ

行方がわからないわ

視界がわからないわ

味もわからないわ

すべて消えて

そしたら

素晴らしい世界