春―…学校の周りには桜が満開で、心地いい。……が、あたしはそれどころではない。



「「待って〜!篠崎梨緒!!」」

「いやです〜っ!!!」



新学期早々、男の子達に追いかけられています…。

なんでかって?
そんなの、あたしが聞きたいよ!!


外の渡り廊下を抜けて、中庭にでて、どこか隠れられそうな場所を探す。
植え込みの裏に隠れようと、勢いよく走り出した。


「きゃ…!!」


ドスン


勢いが良すぎて転んだわけではない。植え込みにいた誰かの足に引っ掛かり、転んでしまった。


「いって…」


引っ掛かってしまったのは、どこかで見覚えのある男の子だった。
彼はゆっくり起き上がり、こっちを睨んだ。


「お前…どこ見て歩いてんだよ」

「ご、あ…えと、すいません!!」


顔を上げた瞬間に、全身の血の気が引いた。あたしが引っ掛かってしまった男の子は、あたしの学年一の不良少年だったから…。



「梨緒ちゃーん、どこー?」


あたしを追いかけていた人達が遠くからあたしを呼んでいて、段々とこっちに近づいてきていた。


「やば…」


直ぐさまここを放れなきゃと思い、立ち上がろうとした時…。
あたしは後ろに引っ張られ、気がついたら彼の腕の中にいた。


「え…!?な、…ん〜!!」

「静かにしろ」


口を押さえられ喋ることができず、ただただ黙っていると、さっきの人達がどこかへ行ってしまった。


「あ、ありが…きゃ!」


ヒョイ


まるで効果音がしそうなくらい、軽々と持ち上げられてしまったあたし。


「降ろして下さい!やっ…」


必死に抵抗するが、やはり女と男で力の差があり……じゃなくて、彼に「うるせぇ」と威圧されてしまい、黙るしかなかった。
そしてあたしは、彼に抱えられたまま、どこかに連れていかれた。



.