店長さんは懐かしそうに、遠くを見ながら続けた。

「それから毎日、来店するようになってね。約束の時間もドンドン増えていった。それと同じくらい色々と話しもするようになったんだ。親戚のこと、両親はそれぞれ一人っ子で、お互いの両親、あいつにすれば祖父母にあたる人は、もう既に亡くなっているということ。両親のこと、母親はなにかの理由で今は近くにいなくて、父親は身体を壊して入院しているということ。自分のこと、養護施設に入っていて、今は独りぼっちであるということ。」
あたしは黙って、店長さんの話しを聞いていた。

「でもある日、もう来れないよって、あいつが言い出したんだ。お金がないからって。僕はとても寂しくってね。だから思い切って言ってみたんだ。僕の家に泊まりに来てくれたら、お金はいらないよってね。そしたらあいつ、凄く嬉しそうな笑顔で、それくらいなら全然いいよって、言ったんだ。」
店長さんの目から、涙が溢れ出していた。

「それからだよ。あいつがたまに、僕の家に泊まりに来ることが条件で、あの部屋、この店の三号室が、あいつの、そうハヤト専用のパソコンルームになったんだ。あいつは学校にも行かず、施設にも帰らず、ずっと何十時間も、あの部屋にこもってゲームをしていた。それでもいいと僕は思ってた。中二の男の子を独り占めにしていることが、とても誇らしくてね。そのうち我慢が出来なくなって、あいつにも、いい小遣い稼ぎになるからって、了承を得てね、あんなブログを立ち上げた。お仲間に、自慢したかったんだ。こんな冴えない、中年のおじさんが、中二の男の子を自分のものにしてるってね。」
あたしは受付に近づくと、ポケットからハンカチを取り出して店長さんに差し出した。