屋敷に戻る間、麗はずっとあたしの手を離さなかった。

気付いてしまった麗への気持ち。
頭の中いっぱいに、今までの色んなことがぐるぐる回る。

何か話さなきゃと思っても、緊張状態の脳は何も考えられない。


「お嬢様、着きましたよ」


ぱっと手を離され、同時に頭の中も冷静になる。

勘違いしてはいけない。

あたしはお嬢様で、麗はただの専属執事。


そう考えると、少しだけ寂しい気持ちが胸を刺す。

この人を、これ以上好きになっちゃいけない。
この優しさは、専属執事としての態度なんだから。