「お前なぁ、舌を出すな! 陸が真似すんだろうがっ!」

「いいじゃん! 陸君がしたら、まだ可愛いよ!」


あ、無視するんだった。

足早に近付いて来た彼は、バシッと軽くあたしの額をはじく。

「いった〜いっ! もうっ、やっぱりあんたのことなんて大っ嫌い! べーっだ!」

「どの口が、そんなこと言うんだ。 ああ?」



今度は、ビニョンとほっぺたを抓られた。


「いひゃいっ!」

「あー! 由梨ちゃんを苛めるな! ていやっ!」

「いでっ! オラッ、陸! 蹴りやがったなっ! 待て、こらっ!」


陸君に悪影響なのは、あんたのその言葉使いだと気づけ。


抓られた頬をさすりながら、陸君を追いかけて行く彼の背中に向かって、また舌を出す。


「由梨ちゃ〜ん、早くおいでよ〜」


さっきとは逆で、今度はあたしが二人を追いかける立場になっていた。


ムスッとしていたあたしの視界に入ったのは、青い空を見上げていた彼。


彼は、ゆっくりとあたしに視線を合わせ…………


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