それを手に取った瞬間から、あたしの頭の中にはある想像がムクムクと膨らんでいた。





このブーツをはきこなし、耀太に腕を絡ませて歩くあたし、みたいな。





きっと横に並んでも、後ろから見たら大人っぽい雰囲気の2人に見えるに違いない。
前からは微妙だけれど……





そんなあたしに、母親がナイスタイミングで素晴らしい提案をした。





「そのブーツ、今はいてるスカートにちょうどピッタリじゃない?
そうだわっ!
せっかくだから、ようちゃんとちょっと外歩いてきたら?」



「えっ??」



「近くの酒屋さんまでプラ〜っとね。
ついでに赤ワインなんて買っちゃったりして……フフフ…」



「…………」






………つまり赤ワインを買って来いってことね……
ったく……素直に言えっつうの!





「じゃあ、行くか…」



「いいよ。
あたし一人で行ってくるから」





素直に立ち上がりかけた耀太を手で制して、自分が立ち上がる。





行きたいのはやまやまだけど、誰かに見られちゃヤバイしね……





「でも…」



「いいから、いいから」






渋る耀太に首を振り、あたしはとりあえずコートを取りに部屋まで上がり、ついでに昨日買ったばかりのコロンを自分に吹きかけた。





香水は抵抗があるけど、コロンならいいかなって思って買ってみたんだ。





クリスマスバージョンで星の描かれた瓶は、ちょっと子供っぽいけど、中身が気に入っちゃって。





フローラル系の優しい香りが、ウチが昔から愛用してる柔軟剤の匂いに似ててすっごくイイ感じ。





って、結局あたしの匂い=柔軟剤という方程式には変わりないんだけれど。





それでも、自分にさりげなく香りを吹きかける行為に憧れていたあたしとしては、大満足だったりする。







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