ふと視線を左上へと移動した母親。
その先には、まったく別の場所を見てる耀太の姿がある。





「ようちゃん」






「は、はいっ!」






それまで俺知〜らないって顔してた耀太が、いきなり名前を呼ばれてビクリと肩を揺らした。
よっぽど油断してたんだろう、めちゃくちゃびっくりした顔をしている。






「なん、でしょうか…?」






親子喧嘩が飛び火した耀太は、恐る恐るといった感じで、台所に立つ母親を見つめた。






「さっき、食費がどうのこうの言ってたわよね?」






「は、はぁ……」





なんともおマヌケな返事。
負のオーラをまとった保護者に、たじたじになってる教師って感じ。






傍から見てる分には、結構楽しいんだけどな……






あたしが思わずニヤけながらその様子を眺めていると、またもやギロリと母親に睨まれた。





おお、こわっ!








「決めたわ」






「何をですか?」






「ようちゃんには、食費を体で払ってもらいます」








「…………」








えっ???






そう力強く宣言した母親に、あたしだけでなく耀太本人もぽかんと口を開けて固まってしまってる。








あのぉ、もしもし、お母様?
何を堂々と娘の前で不倫宣言なさってるのでしょうか?








´