耀太が担任になって、早1ヶ月が経とうとしていた。
「ようちゃん、最近どんどん格好がダラけてきてるぞ」
「俺は教師だからいいんだよ。
それよりお前、ズボンと一緒にパンツまでズレてる。明日までにゴム入れてこい」
最初の1週間こそビシッとスーツで決めていたのに、今じゃこよなくジャージを愛用してる耀太が、わざと着崩してはいてる淳弥のズボンの隙間から、ちらりと見えてるパンツを引っ張った。
「うわっ、やめろ変態!」
「見たくもないもんお前が見せてるからだ」
教室の隅でギャアギャア騒いでる2人は、まるで友達のよう。
っていうか、アンタ教師でしょう?
なに一緒になってゲラゲラ大口開けて笑ってんのよ!って感じ。
しかも付いたあだ名は『ようちゃん』だし。
普通過ぎてつまんない。
というより、その呼び方聞き飽きた。
1時間目のチャイムが聞こえて、やっべぇって呟きながら慌てて去って行く背中を横目で見やりながら、あたしはこっそりため息をこぼす。
今度おばさん達が一時帰国した時、『耀太の先生ぶりはどう?』なんて聞かれたら、あたしは何と答えたらいいんだろう?
“教師の威厳がまるで無し”
“生徒に完全にナメられてる”
“もっと言えば、生徒にしか見えない”
……とでも?
でも、授業はわかりやすいともっぱらの評判だったりするから、困ったもんだ。
教師に向いているんだか、いないんだか、ほんっとよくわかんない奴。
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