その様子を見てたら、ちょっと意地悪してみたくなった。
「明日、その生徒に直接聞いてみれば?」
最後のひと口を押しこんでから、少々投げやりに言ってみる。
だいたい今日1日で、耀太のおかげであたしは色々大変な思いしたんだから、これくらいの仕返しはいいよね。
「あのなぁ、いきなり赴任2日目の教師に相談するわけないだろ?
俺も聞いたところで、すぐにどうこうしようとは思ってないし。
向こうが頼ってきてくれるなら話は別だけどさ……」
本気で悩んでる横顔を見ると、ちょっぴり良心が痛む。
結局のところ、あたしは耀太には弱いんだよね。
「ちなみに、その生徒って誰?」
「ん……、桐島 宏樹」
えっ!?ヒロキ!?
もっと気難しいタイプの子の名前が出てくると思いきや、全然違った。
「ヒロキって、資料には何て書いてあったの?」
「………一応、守秘義務がさ……」
「そんなこと言ってたら、なにがどう違うのかわかんないじゃん!」
コーヒーを飲みきったのか、口をつぐんで立ち上がった耀太は、近くのごみ箱へと歩いて行く。
多分、見えない顔は、かなり悩んだ表情をしてるんだと思う。
こんなに耀太がクソ真面目な考え方してるなんて、これまた意外だよ。
´