今度は慎重にかじりながら、あたしは耀太を見ないように夜空を見上げた。
街灯が邪魔でよく見えないけど、月が三日月なのはなんとなくわかる。






「HRでもそんなこと言ってたね……?」






「西村先生がさ『最後に受け持ったクラスが5組でよかった』って言ってた気持ちがいまなら少しだけわかるよ。
たった1日だけど、そう思った。
さっき引継資料の話しただろ?それさ、クラス全員のことがノートにびっしり書いてあんだ。よっぽど、お前ら大事にされてたんだな?
おかげで俺もだいたいのことは把握できた」







「だいたいって?名前と顔はもう覚えたの?」






「それはバッチリ。全部顔写真付きだったし」






「へぇぇぇ…」






意外。
いい加減そうに見えて、ちゃんとやることやってんだ。






「なんだよ、意外って顔してるな?
お前の2年の成績なんて、そらで言えるぞ」






「いっいいですっ!言わなくていいから!
それより、話は?その資料がどうしたの?」






「ああ、うん……。今日見た限り、だいたいの生徒がその通りだなって思ったんだけどさ、約1名、聞いていた雰囲気とあんまりかけ離れてる奴が居たから気になって。
なんか問題でも抱えてんのかなって」





そう言って、頭をぽりぽり掻いてる耀太は、もうすっかり教師の顔だ。
しかもちょっと熱血気味の。






そういうとこも、かなり意外なんだけどね。









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