家に帰ると親はいなかった。
いつものことだ。
両親は仲が悪かったので
鉢合わせをしないように外出が多いのだ。
机の上に置いてあった
文字数の少ない置手紙を
くしゃっと丸めて捨て、
自分の部屋へ行った。
『科学の進歩を貴女と。
10万からスタート。』
野宮さんからの手紙には大きな文字でただこう書かれていた。
電話番号もしっかりのっていた。
手紙というよりバイトの宣伝のようなものだ。
「バイトの紹介?」
バイトは親から禁止されていた。
子供にバイトをさせているところを
他の人に見られるのが恥ずかしいとかの理由で。
だが、私はどうしてもお金がほしかった。
どうしても、
親の元から離れて一人で暮らしたかった。
体を売ろうかと考えたこともあった。
でもどうしてもそれだけはしたくなかった。
誰かに体を触れられることを
考えるだけで吐き気がした。
なので私は彼からの手紙に興味をもった。