手を握られた瞬間、
そんな事を言われなくても、同じくらい
バクバクいってる自分の心臓の音には気付いている

誤魔化すようにビールを一気に喉に流し込む


胸元から離された手は、
悠に握られたままで…

「一口ちょうだい」

と言う悠に、持っていた缶ビールを手渡した

口に含んだ瞬間、眉を顰める悠

飲めないだから、飲まなきゃいいのに…

「お茶、取ってこようか?」

そう言って立ち上がろうとした私は
次の瞬間、握られた手をグッとひかれて、
ソファーの背もたれに仰け反った


「ちょっ!………んっ!!」

いきなりの悠とのファーストキス

話していた途中で半開きだった唇の隙間から
ビールが流し込まれた

思いのほか量が多くて
含みきれないビールが喉元を伝い零れていく



そういう作戦だったと気付いた時には
唇が離れて、してやったりの悠の顔


「キスするタイミングがいまいち分かんなくて」

中学生みたいな事を言いながら
喉に伝ったビールを掬い上げる指は女を知りつくした男で…


「さっきのはキスには入らないし」

「…タイミングをありがとう」


やっぱり私達の関係は
真樹が言うように奇妙なのかもしれない