私は荷物も持たずに出て来てしまった事に気付き、誰も居ない図書室で一人考えていた。
『先生としてじゃない…男としてだよ?』
あの時の先生の言葉が離れない。
「私だって…先生の事、見てるんだよ……。」
そう言った直後、私は後ろから優しく抱きしめられた。
「えっ…ちょっ誰??」
「男として?」
先生だった。
素直に言っちゃっていいのかな…?
でも…先生なんだ。
「先生、だめです…こんな事したら…見つかったら、先生辞めさせられちゃう。」
「んなの…気にすんな。」
さっきより強く抱きしめる。
そんな先生に涙が溢れた。
「私…先生の事、好きに…なりかけててっ、それでも…自分の気持ちに気付かないように、言い聞かせてた……なのにっ、なのに何でもっと好きになっちゃうような事、するの?…私、先生の気持ちも分からないのにっ…私だけ、好きになっちゃうでしょ…。」
「なぁ、瀬戸。お前は好きでもないヤツを抱きしめたりするか?」
「しま…せんっ。」
「だろ?…俺はさっきからずっと瀬戸を好きだってアピールしてる。それに気付かないのは、お前だ。瀬戸に…どうしても俺を男として見て欲しかった。」
これが、先生の気持ちだったんだ。