「前からね、可愛い子だなって思ってたんだ」
「私は一条さんのこと可愛いと思って見てたから…」
「やだぁ、──…でね」
千幸の表情が変わる。
「碧のことどう思ってるの?」
「────…綿貫?」
「そ。私の元彼」
「…」
そう言われてしまったら中々言えないではないか。
「何とも思ってないよね!だよね」
千幸は菜束の手を掴んだ。
握ったのではなく、掴んだ。
有無を言わせず。
「私、改めて碧に告ろうと思って」
「…そう」
「邪魔しないでね」
怖かった。
ストレートに想いを伝えた千幸の目は、怖かった。
「え…っと」
「碧に近付かないでって言ってんの!──ったく…莉桜にも釘刺せっつったのに役立たず…っ」
友達に何てことを。
あのとき、莉桜が戻ってきたのはそういうことなのか。
「そんなこと言っちゃ駄目だと思います」
「…は?」
「友達なのに」
「友達なわけないでしょ?莉桜はね、碧と仲良いから仲良くしてんの。悪い?」