「ただいまー」

「なんだ、姉ちゃんか…」

帰ってきただけでガッカリされるとは。こっちがガッカリなものである。

「え?帰ってきちゃ駄目なの?」

「…何かさ、変な無言電話が何度も掛かって来て…気持ち悪くて」

菜束は首を傾げた。

「───…変だね」

夏実のことと何か関係があるのだろうか。

「うーん…」

ガチャッ。

「ちょっと葉太、入ってこないでよ?」

「入らないよ。興味無い」

興味無いとまで言われると、姉の着替えなるものを見せてやりたくなるが、それはまたの機会に。

「ふ─────…」

菜束はすぐにへたりこんだ。

──綿貫、キスしてた…

「なんで私あんな…ガン見しちゃったのー…」

──にしても、
結構な勢いで平手打ちを食らったのに、キスするなんて凄い…人間だなと菜束は感じた。

「初めてじゃなかったんだ…まぁそうだよね。モテそうだし」

でも何処かで切ない自分がいた。

──“好きなんでしょ?”

「…好き」

口に出してみて菜束は顔を赤くした。

「違う!好き違うっ!綿貫は友達で…──あー」

口許を両手で押さえてうつ向いた。

「誰に言い訳してるの、私…」