パチン。

終業式の放課後、部活は無かったが、菜束だけが出場予定のコンクールのために絵を練習しようと菜束は一人で美術室に残った。

初めての一人美術室?はドキドキして何だか格好いい気分になる。

「何描こうかな…」

とりあえず菜束は思い思いに筆を動かした。

描いて、乾かして次。
描いて、乾かして次。

ふと時計を見ると、16:00になっていた。

「あれ、今日…木曜日?」

今日はピアノの日なのだろうか。

菜束は美術室を出て、第二音楽室へ向かった。

「ねぇねぇ聞いた?三年の綿貫さんが復部したんだって!」

「嘘!じゃあ試合とか出るのかな?」

「出るでしょ!だって綿貫さんだよ!?見に行こーね!」

──綿貫って部活入ってたんだ。

「ふーん…」

四階ということは中一のクラスの階だ。
中一にも知られているなんて凄いと菜束は感じた。

「まぁ何かキラキラしてるもんね…」

「誰が?」

「!え…あ、ピアノの人」

相手は苦笑混じりに笑った。

「芹沢。芹沢白羽。…ピアノの人って凄いね」

「あ、私…」

「小玲だよね?何で今日此処に俺が来るって判ったの?」