「凄い…綺麗な絵だね」
「だろ?俺も最初は表紙買いだったんだけど話も面白くてさ、…うん」
「へぇー…」
「良ければ貸すよ?…ていうか、貸すよ。本当面白いから。はい、一巻」
「───あ、ありがとう。次返すね」
碧は変わらずの笑顔で頷いた。
その時、教室の扉が勢い良く開いた。
「綿貫居るー?」
碧は声を聞いた時、手を真っ直ぐ上げた。
確かに返事を返すより分かりやすいかも知れない…が。
「莉桜か、何?」
「ご飯行こだって」
「ふーん…じゃそれ絶対読んどいて、次までって言った?」
「うん、ありがとう」
「じゃ…──莉桜、千幸来てる?」
一見して派手という印象の女の子だった。
菜束の記憶によれば、片桐莉桜といって、ダンス部の副部長だった気がする。
莉桜は視線を上に上げてから笑った。
「気にしなくていいじゃーん。お人好し」
「違うけど…だから居るの?居ないの?答えて下さい片桐さーん」
何だか莉桜は菜束にとって怖い印象しか無かった。
だから近付いてきた時には身構えたものだ。
「駄目だなぁ……ん?」
机の菜束のノートの上に多分碧の字で何かが書いてある。