二日経っても、夏実は帰って来なかった。
菜緒子が電話に何回もお辞儀をしているのを見掛けて菜束は、夏実が友人の家に居ることを知った。
「じゃ、行ってきます」
菜束は今日、登校日だった。
照り返しの暑い中、暑苦しい電車という名の箱に乗って、
揺られ揺すられながらの登校は
もう慣れたがやはり気が滅入りそうだった。
菜束が教室の扉を開けると、珍しくほとんどの生徒が来ていたことに菜束は驚いた。
「菜束遅いよー」
「何で皆こんなに早いの?…びっくりした」
「うーん…暇だから早起きしちゃったかな」
「じゃあ言われた教室に移動して下さーい」
文化祭委員に手渡された紙には、
コダマナツカ 3-4 (装飾教室)
とあった。
「4組…」
装飾教室とは、学年に1つ教室を飾りつけて一般の人々に審査してもらい競うことだ。
今年から入ったシステムで、菜束は第一希望に入れていたのだった。
「あ、小玲ちゃんだっ」
「由佳ちゃんも装飾なんだ?良かった、一緒で」
「何を言う、小玲ちゃん友達沢山居るじゃんか」
「うん、まぁね…でも由佳ちゃんは特別」
「うぉー、好きだぁ小玲ちゃん!」