頭には白い包帯が巻かれていて、あちこち傷だらけで、点滴などの管がたくさんある。


でも、間違いなく順也だった。


順也の両親は、順也を執刀した医師に呼ばれて、何処かへ行ってしまった。


わたしは、順也の両親を待って、一緒に帰ることになった。


静奈は健ちゃんから送ってもらうことになり、帰って行った。


わたしは、ICU室のガラス窓の前で、順也の横顔を見つめていた。


30分ほどすると、肩を叩かれた。


振り向くと、おじさんとおばさんが立っていた。


ベッドに横たわる息子を見て泣き出したおばさんを見て、わたしは単純に思っていた。


順也が助かって嬉しいから泣いたのだ、と。


でも、その涙の本当の意味を知ったのは、自宅前に到着した時だった。


車を降りたわたしのあとを追って、おじさんも降りてきた。


「真央ちゃんには、言っておくね」


おじさんの肩越しに、丸く太った半月が暑い夜空に溶けていた。


「きいてくれる?」


わたしはにっこり微笑んで、頷いた。