わたしは泣きながら笑った。


我慢すると鼻が伸びる、なんてきいたことがない。


嘘に決まっている。


わたしの気持ちを和らげようとしてくれている、健ちゃんの気持ちが嬉しかった。


狂ったように泣いたのは、小学生の時以来だった。


いつも優しかったおじいちゃんが、遠い空の向こうに行ってしまった日、今日と同じくらい泣いた。


わたしがあまにも泣くから、さすがに心配してしまったのだろう。


健ちゃんがわたしの肩を叩いて、言った。


「ごめん。触る。失礼します」


そう言ってから、健ちゃんはわたしを抱きすくめた。


大きな手が、わたしの背中を何度も何度も叩いた。


わたしは、涙を止める方法を知らなかった。


わたしは、大泣きしたかったのだ。


そう気付いたのは、健ちゃんに言われた時だった。


「泣きたかったんだな。よしよし、いい涙だんけ。1等賞」


健ちゃんはTシャツの裾をまくり上げて、わたしの顔を拭いた。


Tシャツからは、海のような香りがした。