笑う、怒る、泣く。


他にも、たくさん。


わたしが順也の良いところや悪いところを知っているように、順也もわたしを分かってくれていた事が嬉しくてたまらなかった。


嬉しくて、悔しかった。


わたしは、泣いていた。


あふれるものを止めることができなかった。


ずっと、こうして、わたしは泣いてみたかったのだ。


健ちゃんがにっこり微笑んで、言った。


「泣きたい時は、泣かないといけねんけ。我慢すると、鼻が伸びるんけ」


そう言って、健ちゃんはわたしの鼻をつまんで、軽く引っ張った。


わたしは、その手を振り払おうと思わなかった。


健ちゃんの指が、優しいことに気付いたからだ。


「我慢すると、5メートル伸びるんけ。おれは、10メートル、伸びたことがある」


健ちゃんは10本の指を広げてみせて、八重歯を見せて笑った。