不謹慎にも、ほどがある。


「おれ、笑うのが好きだんけ。でも、泣くのも好きだんけな」


でも、健ちゃんの笑顔は不謹慎だとは思わなかった。


「昨日、順也と、飯食いに行ったんけ。順也が、真央のこと誉めてた」


わたしは〈えっ〉という顔をして、健ちゃんの腕を掴んだ。


健ちゃんが、にっこり微笑んだ。


「負けず嫌いで、頑固で、人見知りで。ちょっと、狂暴で」


そう言って、健ちゃんはわたしの顔を指差した。


「でも、いつも明るい。妹が笑うと、嬉しいって」


順也が言ってたんけ、と言い、健ちゃんはわたしの髪の毛を撫でた。


健ちゃんの手は大きくて温かくて、わたしの単細胞な頭に良く馴染んだ。


「けどな、真央は何でも我慢するくせがあるからって、心配してた」


健ちゃんの唇がゆっくり動く度に、わたしは夢中になってそれを読んだ。


健ちゃんを見つめながら、いろんな表情の順也ばかり思い浮かべた。


保育園の頃、小学生の時、中学生の順也。


高校生の順也。