静奈のブルーグレー色のきれいな瞳から、大粒の涙があふれた。


静奈が、わたしに抱き付いてきた。


相当の想いを抱えて泣いているのだと分かった。


いつも明るく天真爛漫な静奈が、ひどく怯えた子ねずみのように小さく思えた。


わたしは、静奈を抱き締めた。


この瞬間ほど、静奈を愛しいと思ったことは無かったかもしれない。


静奈の薄くて華奢な背中を優しく撫でる、大きな手があった。


おじさんの手だ。


わたしは、静奈の肩を叩いた。


顔を上げた静奈に、おじさんが言った。


「しーちゃんのせいじゃないよ。順也が、しーちゃんを守りたくてした事だ」


しーちゃんは、何も悪くない。


そう言って、おじさんは静奈の頭を優しく撫でた。


終いにはおばさんもやって来て、静奈を強く抱き締めた。


順也と静奈の間に、わたしたちの知らない何かがあったのは確かだ。


でも、順也の両親と静奈が抱き合っているのを見て、2人はこの先も大丈夫だと、わたしは疑いもしなかった。


突然、健ちゃんに腕を掴まれて、わたしは待合室の外に連れ出された。