こんな時まで、わたしなんかを気遣ってくれるのだ。


わたしが首を振ると、今度はおばさんが肩を叩いてきた。


「きいたよ、しーちゃんから」


おばさんは、静奈を、しーちゃんと呼んでいる。


「警察の方からも。真央ちゃんにまで心配かけて……あの子は」


わたしは、何も言ってあげることができなかった。


自分の不甲斐なさに、腹が立って仕方なかった。


わたしは、順也が居ないと、幼馴染みの両親とも会話をすることができないのだ。


その時、肩を叩かれて振り向くと、そこにはひどい格好の静奈が立っていた。


髪の毛は山姥のように乱れ、浴衣は無惨にはだけて血が染みていた。


足は、裸のままだ。


その無防備な足でつめたい床に立っている静奈が、不敏でならなかった。


わたしは、さっき拾ってきた下駄を静奈に渡した。


〈足、冷たくない?〉


わたしが訊くと、静奈は首を振った。


「ごめんね。全部、私が悪いの」


静奈の両手が、震えながらそう言った。