病院に着くと緊急手術が行われていた。


手術室前の長椅子で順也の両親がうなだれるように肩を寄せ合って座っている。


わたしは、おばさんのもとへ駆け寄り肩を叩いた。


弾かれたように、おばさんが顔を上げる。


「真央ちゃん」


わたしを見たとたんに、おばさんは狂ったように泣き崩れた。


なぜだか、嫌な予感がわたしの身体を蝕んだ。


まさか、順也は……。


おばさんが、わたしの右手を強く握り締めて、泣き続けている。


おどおどするわたしに、おじさんがゆっくり言った。


「大丈夫だよ」


おじさんもおばさんも手話はできないけれど、こうして大きな口で話してくれる。


「今、手術中だよ。心配かけたね。ごめんね」


順也の底無し沼の優しさは、おじさん譲りなのだと思う。


本当は不安で心配で、たまらないはずなのに。