小学生の頃、毎日、わたしと一緒に登下校してくれた。


中学になって勉強が難しくなると、毎日ノートをかしてくれて、放課後は部活に遅れてまでもわたしの居残りに付き合ってくれた。


誕生日やクリスマスには、毎年、プレゼントをくれる。


わたしは、中学を卒業したら隣県のろう学校に行くことになっていた。


それが嫌でたまらなかった。


この町を離れたくなかった。


そんなわたしの気持ちに真っ先に気付いてくれたのが、順也だった。


「ぼくが一緒だったら、真央も普通の高校、受験させてくれる?」


わたしの両親に、順也はそう言ってくれた。


「真央を、特別扱いしないで」


そう言って、わたしの能力に合わせて、ひとつレベルの低い高校を一緒に受験してくれた。


順也は、わたしにとって、本物のお兄ちゃんだ。


わたしは、順也にどれくらい救われ、守られてきたのだろう。


いつも貰ってばかりで、何もあげることができないのに。


それでも、順也は一度も嫌な顔をしたことがない。