静奈は裸足のまま、救急車に乗せられた順也に飛び付き、しがみついた。


浴衣ははだけているし、帯もほどけかけていた。


ぐったりしている順也と、狂乱する静奈を乗せた救急車が走り出した。


わたしは、動くことができなかった。


震えるわたしを、健ちゃんがひょいと抱き抱えて歩道に移動した。


わたしは手のひらに付着した血を見て、平常心ではいられなかった。


健ちゃんはその手を握って、わたしに言った。


「落ち着け。な」


わたしは、何度も首を振った。


順也が……順也……。


尋常ではないと判断したのだろう。


健ちゃんんが、わたしを抱きすくめた。


そして、背中を優しくたたき続けた。


「おまえ、順也の幼馴染みだろ。しっかり」


わたしが頷くと、健ちゃんは大きな口で続けた。


「順也の親に、連絡してんけ。電話番号、わかる?」


警察官が、わたしと健ちゃんを見つめていた。


わたしは震える手でスマホを取り出し、震える指でアドレス帳を表示させ、健ちゃんに渡した。