無理だった。


わたしには、すぐに理解することができなかった。


ただ、訳が分からないまま、汐莉さんに小さく頷いた。


冷静なわたしを、へんに思ったのだろう。


汐莉さんはぽかんと口を開けて、立ち尽くしていた。


近くのコンビニから店員さんが飛び出して来て、わたしを追い抜いて行った。


大型トラックの近くまで行った時には、小さな人だかりができていた。


わたしは、その人波を掻き分けて中に入った。


その光景を目の当たりにして、わたしは息を呑んだ。


大型トラックのヘッドライトにべったりと付着した、赤い血。


まるで、光沢を失った赤いペンキのようだ。


その真下にぐったり倒れていたのは、わたしが良く知っている人の身体だった。


その身体にしがみついて、狂ったように静奈が泣いていた。


その横で、全てを失い、絶望にうちひしがれたような白い顔で立ってるのは、おそらく、トラックのドライバーなのだろう。