たぶん、健ちゃんも同じ気持ちだったのだと思う。


わたしと同じタイミングで駆け出した。


でも、わたしは突然立ち止まり、息を呑んだ。


静奈が掴まれた腕を振りほどいた拍子に、縁石に躓いて国道に飛び出してしまったのだ。


向こうからは、大型のトラックが加速しながら迫っていた。


危ない!


順也が国道に飛び込み、静奈を歩道に突き飛ばした。


見える景色が、すべてスローモーションだった。


順也の全身が、強烈な光に照された。


わたしの背筋に、寒気が這い上がった。


気持ち悪かった。


順也!


わたしは、その名前を心の中で叫んで、すぐに駆け出した。


でも、健ちゃんがわたしの腕を強く引っ張って、抱き締めた。


わたしの頬に、小さな振動が伝わってくる。


健ちゃんの心臓が飛び跳ねているのだと分かった。


健ちゃんは、わたしの両耳を手のひらでしっかりとふさいで、そして、大きな体をびくりとさせた。