わたしが振り向くと、凄まじい勢いでふたりが走って来るのが見えた。


先に走って来たのは紺色の浴衣姿の静奈で、その後ろをTシャツにジーンズ姿の順也が駆けて来る。


怖いくらいに異様な雰囲気だ。


静奈は切羽詰まった顔で、泣いているようだ。


浴衣の裾を気にもせず、あちこちにはだけながら全速力だ。


その後ろを追って来る順也は静奈よりも怖い顔をしていて、何かを必死に叫んでいるように見える。


そのはりつめた雰囲気に、わたしは歩道の隅によけて立ち尽くすばかりだった。


健ちゃんも目を丸くして、突っ立っていた。


わたしたちの横を、ふたりは凄まじいスピードで駆け抜けて行った。


ふたりが通過した時、わたしの前髪が夜の熱風に揺れた。


ここまで尋常ではない様子のふたりを見たのは、初めてだ。


ずっと向こうでは、亘さんと汐莉さんも突っ立ってこちらを凝視している。


わたしの心臓が、ちぎれそうなほどうろたえていた。


胸騒ぎがした。