叩かれた背中が、定規のようにしゃんと伸びる。


「だから、堂々と歩け。危ない時は、おれが助けてやるんけな」


暗くて殺風景な夜道なのに、わたしの周りだけが明るい光に照らされているような気がした。


もったいない。


そう思わずにはいられなかった。


それくらい、わたしにとっては眩しい言葉だった。


わたしは、不思議でたまらなかった。


どうしてだろう。


どうして、この人の唇を読むと、心が前向きになるのだろう。


それからも、車を停めている近くの駐車場を目指しながら、わたしと健ちゃんは話し続けた。


健ちゃんは後ろ歩きをして、わたしは前を見て頷いたり首を振ったりしながら。


もう100メートルも歩けば駐車場だという時、後ろ歩きをしていた健ちゃんが、突然、立ち止まった。


「何だ?」


そう言って、健ちゃんはわたしの後ろをじっと見つめた。