「もしもし」
そう言うと、はっと息を呑むような声が聞こえてすぐ、女の子の「もしもし」という声が聞こえた。
俺は、その声があまりに可愛かったので不覚にもドキッとしてしまい、逆にそんな自分に対して焦りを感じた。
「あの、吉村くんですか…?」
ふいに名前を聞かれて焦った俺は、「はい!」と大声で返事をした。その瞬間、どっと油汗がでる。
(そういえば、姉貴この人が誰か言わなかったよな)
まずい!と俺は心の中で叫ぶ。
(こんな可愛い〔であろう〕女の子に名前を聞いたら失礼だ、てかこの人誰なんだ?分かんねぇ…いやでもこの声は…こんな可愛い声なかなかいねーし…)
俺は混沌とした脳内をフル稼働させて考えた。可愛い声…可愛い声…
そして、俺は閃いた。
(相沢さんだ!)
その答えに行き着いた俺は、緊張と高揚で拳に力が入った。
そうだ、それしかない、と考えて、頬が緩んでだらしがなくなる。
相沢さんとは、俺のクラスで一番人気のある女の子だ。正直2年のクラス替えをする前から可愛いと有名だったが、同じクラスになってよく理解した。
相沢さんは小柄で華奢で、髪は長くてもちろん天使の輪がくっきり見える程きれいでまっすぐしている。その上小顔で、色が白くて、しかも目が大きいときている。可愛くないはずはない。