びっくりして飛び起きると、下着のような格好をした姉が片足だちで頭をぼりぼりと掻きながら入り口に立っていた。俺は一気に気分が下がる。
「…ノックぐらいしろや」
俺が睨みながら文句を言うと、姉は「めんごめんごー」と苛立ちを増長させるように死語を連呼した。自然とコメカミの血管が浮きあがる。
俺は必死で怒りを押えて、「おい姉貴、」と切り出した。
「なんなんだよ、てかお前そのきたねー格好やめろ、まじ気分下がる。女ならもっと女らしい格好をしろ」
すると、姉は「はぁ〜?」と馬鹿にしたように笑った。
「お前はオヤジかよ!ってかせっかく下から電話取ってきてやったのに、感謝くらいしろよバカ」
そう言って、姉は電話の子機を弾丸のように俺に投げてきた。「いたっ」と俺が叫ぶと、満足したようにさっさと部屋を出ていった。
(くそ、あの女…さっさと彼氏に振られてしまえ)
俺は危うく呪いをかけそうになったがやめた。
それよりも、電話の子機が気になったのだ。
(珍しいなぁ…)
そう思い、首をかしげる。
もうここ何年も、家電に俺あての電話が来たことなどない。
(連絡網かなんかか?)
おれは、子機の通話ボタンを押した。