(ふむ…、やはり晴人君の趣味が前面に出たか……)
内装、サービス、隠された工夫。すべてが、晴人の趣味でありコンセプトに一致している事を、慎治は確信を持った。
(ゆるやかに流れる時に身を任せ、癒やしの空間を……)
確かにそれは店の雰囲気に合っていた。
そして、もう一つのコンセプトも同じく、店員らの雰囲気から見て取れた。
〔家族。それが第4号店の、2つ目のコンセプトです〕
晴人が店舗の、全体の作りを考えて居た時に語られた一言だ。
それはファミーユ、家族という看板とも掛けられたコンセプト。
確かに店員たちも楽しそうに、取り組んでいた。
(新参の方にも団欒と笑顔を、ね)
新参なのに団欒を生むという矛盾は、家族だからこそ出来ると彼は云う。
期待と“家族”の成長に思わず笑う慎治。
そして、おもむろに携帯を取り出して、相手が出ると同時に、こう言った。
「もしもし、例の件。僕からも是非お願いします」