「ふーん、これがカナちゃん特製のレモンティーね」
「いや、だから姉さん、勝手に飲むなよ……」
さっさとやることを済ませ、晴人にちょっかいを掛ける裕美。
ブラコンの姉に比べ、シスコンの気が全くない弟だが、対して嫌がる素振りを見せないのは、まんざらでもないからなのだろう。
時々、本当に楽しそうな笑顔を見せる事を、本人以外の本店メンバーは知っている。
「とりあえず、もう仕事に戻りなよ。ジュンさんが大変だろ?」
「え~、まだ10分しか居ないじゃない」
「もう開店5分前だろ。姉弟揃って迷惑掛けるのも悪いし、ほらほら戻った戻った。」
ぶ~垂れる姉を追い出し、晴人は短いため息をひとつ。
姉のいつも通りで気遣われていた事に、歯がゆさを覚えていた。