「あれ、姉さん。イジケてどうしたの?」
「べっつにぃ。どうせ私なんか頼りにならないも~ん」
「はぃ?」
冷え○タをデコに引っ付けて、開店後初めて店に現れた晴人。
イジケている裕美を置いて、ショーケースに居る叶の下へ。
「もう大丈夫なの?」
怒られると読んでいたが、そこには心配そうな表情があった。
「あ、あぁ。おかげで熱はひいたよ」
少々、拍子抜けとまでは言わないが、戸惑いを感じる晴人。
「あまり無理しないでよね。一応、最高責任者なんだから」
「わかってる、今後は気をつけるよ」
静かな時間が緩やかに流れる。
会話は途切れても、そこには安らぎはあれど、気まずさのない瞬間。
居心地の良い瞬間が存在していた。
「なんやなんや、えぇ雰囲気のところ悪いんやけども――」
「少しは真面目に働いてよ? 今かなり混んでるんだからさ」
famille 第4号店。
「え!? ちょ、ちょっと変な風に言わないでよ!」
「なに言ってんだ、二人とも!! さっさと持ち場に戻るぞ!」
ここはケーキと癒やしを求めて、お客様が溢れる予定のお店。
「なんだかショーケースの方が賑やかですねぇ」
「え? ど~せ、店長とチーフじゃない?」
店員も来客者も――
「晴人、楽しそうだなぁ……」
家族として笑顔の溢れる喫茶店。