胸に顔を寄せながら、こうして髪を撫でてもらうと、すごく安心するんだ。
心の中が何かあったかいモノで包まれていくような、
満たされていくような、そんな…気持ち。
「ん……」
凜久に抱きついたまま、髪の隙間を通り抜けていく指の感触だけを……ただ、感じていた。
――そろそろして。
「そういえば、……ふたりっきりだね」
何気ない凜久の一言に、さっきまでは居心地が良かった体温が、
ゆっくり…だけど確実に上がっていく。
「そうだね…」
さっき先生が開けた窓からは、部活のかけ声。
吹奏楽のいろんな楽器の音色が流れ込んでくる。
すぐそこで聞こえるはずなのに、
――ひどく遠くに感じた。