「ダメ、ちゃんと俺の目見て」
――ほら、お約束の展開。
長い指が顎に添えられれば、顔だけじゃない。
体の全部が、機能停止。
ちょっぴり意地悪で、どこか真剣な瞳に縛られ、体ひとつさえピクリとも動かなくなる。
「……好き、あの頃より…」
“もっと”
言い終わる前に、ふたつの唇が重なり合う。
「――行こうっ」
開いた電車のドアを、勢いよく飛び出す。
夏を感じさせる照りつけるような日差しは、地面に影を作る。
そこには、
あの頃より少し背が伸びた……
――手を繋いだふたつの影を。
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