「帰り、遅かったな。」

後ろから声が聞こえて振り向くと、スウェット姿の優斗が立っていた。

癒えたはずの傷がズキっと痛む。

上手く顔を見ることが出来ない。

「真中と…なんかあった…?」

ゆっくり優斗を見ると、凄く不安そうな顔をしていた。

「…なにもないよ。遅くなっちゃったから、送ってもらっただけ。」

とっさに嘘をついてしまう。
告白された、なんて言ったら…
もっと不安な顔を見ることになるだろう。

「…今日、親が帰り遅くなるらしくて、お前ん家でメシ食べることになった。一緒いれてくれ。おばさんには言ってある。」

「うん……」

門を開けて、玄関に向かう。

鍵を鞄から取りだそうとすると――‥

優斗に腕を掴んで引き寄せられた。

「えっ………?」

あたしの肩に、顔を埋めて震えている。

「ちょっと……どうしたの…?」

顔を見ようとしても、背中から強く抱きしめられていて体の向きが変えられない。

「…暫くこのままでいさせて……」

腕の力とは反対に、声はとても弱々しい。