「莉奈?」

名前を呼ばれてはっとする。

目の前には、あたしの顔を覗き込んだ敬ちゃんの顔があった。


「へっ?」

「ボーっとしてた。」

「あっ。大丈夫!」

あたしは笑顔を作る。

こうやって、扉を強く閉めるんだ。

笑顔が…

扉の鍵なの。




――――‐

駅までの、ほんの数分。

あたしたち3人はあっという間に仲良くなった。

「じゃ、また明日ね。」

駅前のロータリー。

あたしたちの家は、この駅から歩いて数分の距離にある。

敬ちゃんとはここでバイバイ。

手を振って背を向けた途端。
「アドレス教えて!」

敬ちゃんに勢い良く腕を捕まれた。

「あっ、ごめん。」

強く掴んだ手をパッと離した。

「莉奈のアドレス…教えて。」

目がとても真剣で吸い込まれそうになる。

「もっと仲良くなりたいんだ。」

「う、うん。」

あたしはカバンから携帯を取出す。

「莉奈から赤外線してもらえる?」

ツールからプロフィールを敬ちゃんの携帯へと送信する。

「来た!ありがとう。帰ったら俺の送るね!気を付けて!」

手をブンブンと振って駅の中へと入っていった。