「……いいじゃん、別に。俺が何て断ろうと。」

そう言って、プイっとそっぽ向いてしまった。
なによ……。
優斗から黒板へと視線を移す。
時計の針は8時30分を示そうとしている。

キーンコンカーンコーン

SHRの開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。
ガラガラっ。
教室の前のドアが元気よくスライドされ、担任の先生であろう人物が爽快と表れた。

「おはよう!」

手に持っていた名簿を机にポンっと起き、私たちに笑いかける。

「今日から担任になりました、向井真美子です。一年間よろしくね!
では、さっそくですが出席を取ります。」

美佳の隣を見ると真中くんの席は、ガランとしてる。
まさか、初日から遅刻?




「内原優斗くん。」
「はーい。」

「遠藤壮介くん」
「はーい。」


「そんなに気になんの?真中のこと。」

ずっと真中くんの席を眺めてたら、優斗が意地悪するように静かに話し掛けてきた。

「別に。」
「さっきから、座席眺めてんじゃん。」
「なんで、そういうこと言うの?
あたしはただ…まだ来てないから、初日から遅刻なんて凄いなって思ってただけだよ。」
「ふぅ〜ん。」

今日の優斗は何かと気に障る。
もう放っておいて!!

「…中敬くん。」

先生の声がフェードインしてくる。

「真中敬くん。」

教室中の視線が、彼の座席へと集中した。

「あれ?真中くんはまだ来てないのかな?
誰か知ってる人いない?」



ガラガラガラ──‥

その時、後ろのドアが勢い良く開いた。

「はいはいはーい!真中、いますっ!!」

そこには元気よく手を上げて、先生に自分の存在をアピールする男の子がいた。

「ちょっと真中くん初日から遅刻ー?」
「いやいや。違いますよ〜。朝練押しちゃって!」
「もう、今回だけだからね?」
「すいません。」
「空いてる席が君の席だから。」
「ありがとうございまーす!」

焼けた黒い肌から白い歯がチラッと見えた。
この子が真中敬くん・・・・
確かに雰囲気カッコいいかも。