「ちょっと話しあるんだけどいい?」
何も言わない俺に痺れを切らしたのかまた話しかけた。
これから昼飯っていうのに普通に呼び出す女の神経がわからない。
「何?」
冷たい、なんの感情もない声で言う。
女はひるむことなく
「ここじゃちょっと・・・
外行こう」
といってきた。
はぁ。と心の中でため息をつき「わかった」と返事をした。
「で話しって何?鈴木さん」
裏庭に移動してすぐに話しかけた。
こっちとしては早く話しを終らして帰りたい。
「名前知っててくれたんだ」
とても嬉しそうに言う。
実際知ってたわけじゃない。
坂本がさっき喋ってたから知っただけ。
「で 話しは?」
いい加減うざくなった俺。
相手もそれがわかったのか少し慌てた素振りをみせた。
「えーっとそのー。
ずっと格好良いなって思ってて気が付いたら好きになってました。付き合ってください。」
少し潤んだ目をして上目遣いで俺を見てくる。
このやり方で何人の男を落としたかは知らないけど俺には全く効かない。
「悪いけど無理」
断られたのが意外なのかびっくりしたかのような顔をした。
「な、なんで無理なのよ。他に好きな人いるの?」
焦ったかのように聞く。
「好きな奴なんかいない。単に君に興味がない。ただそれだけ」
女はワナワナと震えだし「てめぇだってただ顔がいいだけだろ。」と捨てゼリフを残して去っていった。
これだから女は嫌い。
裏表が激しすぎる。
本性なんてろくなもんじゃない。
ふぅ。とため息をついて教室へと歩きだした。
「山上ーどうだった?何された?」
「鈴木さんに呼び出されるとかうらやましい」
クラスメイトが口々に話しかけてくる。
「別に」
その一言ですませる。
「別にってどういう意味だよ。告られたのか?なぁ教えろよ!」
しつこく話し掛ける奴はシカト。わざわざなんで教えなきゃいけない。
友達とか馴れ合いとかほとんどいらない。
でも俺にも転機が訪れた。
あの出会い。
それが一番の転機だと思う。
人生を考え方をすべてを変えてくれた。
ガラッ
「失礼します」
「山上ーこっちだ」
牧野先生が手を振りながらよんだ。
「おはようございます」
「ああ。おはよう。これ配っといてくれ。後はえーっとこれとこれ。よろしくなっ」
「わかりました」
「いやぁ山上がいると助かるなぁ。仕事がてきぱき片付く。うちのクラスも仲いいみたいだし、いじめもなさそうだし・・・」
「でもうちのクラスは全員出席したことありませんよね。決していいクラスとは・・・」
「ああ。愛沢なっ。あいつは仕方ないんだよ・・・」
「仕方ないって?」
「ん まっ気にすんな!
今日の連絡はそれだけだから」
「わかりました。失礼します」
納得しない顔をしながら職員室を出た。
(愛沢詩保。3年になってから一回も登校してない。先生は仕方ないって言ってたけど、問題児か何かなのか・・・
誰かに聞いてみるか。)
(クラス1の情報通と言えば・・・やっぱり坂本か)
「坂本」
「ん?山上?何だよ??」
「お前 愛沢詩保って知ってるか?」
「愛沢?愛沢ってクラスメイトじゃん」
「だーから どういう奴かってこと。顔とか性格とか」
「そゆこと。
うーん。よく知らん。」
「知らないのかよ」
「ああ。愛沢のことは秋維に聞け」
「三原?なんで?」
「あいつん家、愛沢の家と近いらしくよく先生から頼みごとされてるから一番詳しいと思う」
「そうなのか。わかった。邪魔して悪かった。じゃあな」
昼休み
「三原」
「山上?」
「愛沢詩保 知ってるか?」
「なんで んなこと聞く」
聞かれたく無かったのか睨みながら声を低くして言う
「知ってるか」
負けじと強くはっきりした口調で尋ねる
「チッ 知ってる。だから何だよ!」
「学校始まってから2ヶ月以上がたったが彼女は一度も学校に来ていない。それはなぜだ?」
「どうしてそんなこと聞く。お前には関係ないだろ」
「関係はある」
「はぁ?」
「俺はこのクラスの委員長だからな」
「委員長だからなんだよ。何の関係がある!」
「もし彼女がいじめが原因で学校に来てないようならクラスの問題として話しあわなきゃいけない。
彼女がもし問題児として学校に来てないようなら来てもらう。
中学は義務教育だ。学校に来る義務がある」
「後者だったらどうやって学校来させる気だよ!?」
「家まで行って説得する。当然の行為だ」
「・・・わかった。
お前今日の放課後ヒマか?」
「放課後?なぜ放課後。この話と何か関係があるのか?」
「ああ。関係がある」
「そうか。なら空いている」
「わかった。じゃあ放課後ちょっと付き合え」
「わかった」
話が丁度終わった時にチャイムがなり翔も席に戻った
「秋維ー 帰ろうぜぇ」
授業も終わり蛍斗が話しかけた。
「ああ。今日は山上も一緒だ」
「山上!?なんでまた?」
「気にすんな。山上 行くぞ。」
「わかった」
「楓ー。帰ろー」
「あっ!蛍斗が呼んでるから。じゃあまたね。2人とも」
友達に手を振ってこっちへ来る。
「お待たせ。
あれ?山上君??」
「なんか一緒に帰るんだって」
「えっ!?なんで?」
「さぁ?俺もよく知んない。決めたの秋維だし」
「ふーん。まっいっか」
「秋維 山上君。帰ろっ」
「ああ」
「おいっ 三原。どこいくだ?」
「ついてくればわかる。
行くぞ。」
そういって階段の方へ歩きだした。
「おい。どこまで行くんだ!?知らない駅で人を降ろしといて」
全く何も言わない秋維に痺れを切らし聞く。
「ったく もうすぐだから黙ってついて来い」
そういうとまた何も言わずに歩きだした。
「ほら。着いたぞ」
「はぁ?どこだよ ここ。
誰の家だよ?」
「詩保の家」
それだけ言うと秋維はチャイムを押した。
インターホンで話した後、しばらくして玄関のドアが開いた。
「いらっしゃい みんな」
「お邪魔します おばさん」
「どうぞ。
あら?見たこと無い子ねぇ?」
「ああ。僕達のクラスの委員長です」
「初めまして。山上翔といいます」
「まぁ そうなの。
初めまして。詩保の母です」
お母さんらしい優しい笑みを浮かべる。
「どうぞ上がって。詩保は部屋にいるから」
「あっ はい。ありがとうございます」
「いえ。ごゆっくり」
「おい 山上。こっち」
「勝手に上がっていいのか?」
「あっ!?いいんだよ。別に」
そう言ってトントンと階段を上がっていった