電話を切ると頬をぷくっと膨らませて早苗を睨んだ


 (もうっ!立夏さんに電話しなくても…)

 (由衣が睨んでも全然怖くないんだよねぇ?)


 「ごめんごめん」


と言いながら由衣の頭を撫でる

まるで子供をあやす母親か、妹をなだめる姉のように


 「婚約者?ってのが迎えにくるんでしょ?見てみたいなぁ?」

ーみ見てもなんもないよっ!





* * * * *


車内は気まずかった


早苗を帰したかったが立夏を見ると聞いてくれなかった


早苗は立夏にあれ来れ聞いた後、由衣に聞かせないように立夏にこそっと耳打ちして上機嫌に帰って行った


だから由衣には立夏が黙っているのは気分を害したと思っていた