立夏の顔が離れてぼうっとしてしまう由衣


そこへ立夏は村田を呼んだ


 「は、はい」


村田も呼ばれるとは思っていなかったが、主人の元に歩み寄るとみるみると由衣は茹で蛸になる


 (はっ…はずかしいっ)


由衣はイスから弾かれたようにダイニングを出て行った


 「立夏様…あのように戯れては由衣様が可哀想です…」


村田が苦々しく呟くと、立夏はコーヒーをすすって


 「戯れてなんかないさ、本気でしたんだ」


 (由衣様にはまだ理解できてないはずですよ?男心なんて…)


村田のため息のような独白が聞こえてきたように立夏はイスから立ち上がって


 「由衣は僕の心だけ理解してくれればいいんだ」


とダイニングを出て行った